7inch JAZZ WORLD ( ジャズのEP盤の世界 )

★未知との遭遇 ~ 7inch EPに録音された ジャズの 批評と研究 (資料)★ ★7inch EPには12inchでもCDでもリリースされていないオンリーワンの未知なる演奏が潜んでいます。1975年頃から御三家レーベルとヨーロッパ盤のコレクションと引き換えに7inch EPの収集という道楽にハマり現在に至る。年月を惜しまず収集し1枚1枚丹念に針を落としたコレクションをレビューしています。寄せ集めCDではなく、7inch EPの素晴らしい初版オリジナル・ジャケット・デザインを記録に残していくことも重要だと考えています。ポリシーは「レコードは価格で語らず」「ジャケ無しドーナツ盤も丹念に聴く」。★★サイト内画像・文章の転用・転載は御遠慮ください★★

カテゴリ: ポーランド・ベルギー

Wanda Warska(vocal)  Wojciech Karolak(p)  Juliusz Sandecki(b)  Andrzej Dąbrowski(ds) Rec.1962
■Wanda Warska 1932年ポーランドのポズナンに生まれる。1950年代中旬頃より同世代のピアニストAndrzej KurylewiczのTrio とともに作品を残すなど本国を中心に活躍する。彼女は決してテクニックで聴かせるタイプではないが、この作品では良い意味で線の細い上品な歌声で英語でスタンダードを歌っている。彼女の最大の魅力はコケティッシュで個性的なフレージングにあるが、特に「Prelude To A Kiss」でのオンリーワンな感情移入は素晴らしく一度聴けば記憶に残る。他に比較的オーソドックスに歌う「My One And Only Love」、彼女が兼ね備えた表現力を使い切ったかのような哀愁を込めて歌うドラマチックな絶品のバラード「Time After Time」、「He Needs Me」を収録。この7inch EPで彼女をサポートするのはサックス奏者からピアニストに転身したての当時22歳の新進の若手ピアニストWojciech Karolak率いるトリオである。ここでは音数少なく控えめにリリカルなプレイでWarska(vocal)を引き立てているが、このトリオは数年後ポーランド屈指の王道テナーサックス奏者Jan WróblewskiをリーダーとするPolish Jazz Quartetを支え名実共にポーランド・ジャズ界を牽引することになる。深夜に孤独を楽しみたい時にひっそりと聴きたい寛ぎに溢れたバラード作品集である。オリジナル・ジャケット有りは珍しい。
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 Big Band Jana.Tomaszewskiego with Wlodzimierz Andrzej Nahorny(as)  Rec.1962
ヨーロッパジャズ黄金の最盛期1962年に録音されたJana.Tomaszewskiego率いるビックバンドによる傑作。1961年~1965年といえば現在でも専門誌等で紹介されるヨーロッパジャズの名作名盤が世に出た興味深い期間である。ポーランドにおいてもKrzysztof Komeda(p)、Andrzej Trzaskowski (p)、Jan Ptaszyn Wroblewski (ts)、Zbigniew Namysłowski (as)等 モダン・ジャズファンにも記憶に残っているミュージシャンが自身の代表作を録音している。この作品のバンドリーダー Jana.Tomaszewskiegoについては詳細な情報を得ることは出来なかったが、このバンドに参加した事がきっかけで後に Duke Ellingtonから賞を与えられ、ポーランドジャズ界の巨匠として語られるマルチ・インストゥルメンタリストWlodzimierz Andrzej Nahornyがサックス奏者として参加しているという事実にはたどり着いた。彼は後にAndrzej Trzaskowski sextet のメンバーとしても活躍することになる。スイング・ジャズにモダンなテイストを散りばめたゴージャスなサウンドは非常に心地よい。トランペットの魅力的なソロ、バンドを鼓舞するドラムが聴き所の「Shiny Stockings」、一糸乱れぬブラスアンサンブルがアップテンポで疾走する中、テリーライクなトランペットソロに続いて後半に「待ってました」とばかりに登場する Wlodzimierz Andrzej Nahorny(as)の熱いソロに酔う Neal Heftiの名曲「Dinner With Friends」。間違いなく60年代ポリッシュジャズを代表する1枚だろう。
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Jan Ptaszyn Wroblewski(ts)  Stanimir Stanczew(tp)  Krzysztof Sadowsk(p) Juliusz Sandecki(b) Adam Jedrzejowski(ds)  Rec.1962
■ヨーロッパ・モダンジャズ最盛期の1960年代初頭にポーランドで結成され、ほんの数年間だけ活躍したThe Jazz Outsiders の唯一のリーダー作。メンバーを見ると明らかに後にポーランド・ジャズ界の巨匠と評価されることになるJan Ptaszyn Wroblewski(ts) がリーダー的存在であったことは想像ができる。ハードバップ編成で演奏される4曲は、いずれも歯切れの良い演奏で特に随所に聴けるWroblewski(ts)の僅かにエッジの効いた良く鳴るトーンが魅力的である。ブルーノート・レーベルで聴けるような熱い展開が素晴らしい「Windmill's Country」、テンポを落とした暗示的な前奏からフロントの絡みが続きWroblewski(ts)がコルトレーンの影を映すソロを聴かせる「Outsideria」、「Nineteenager's Waltz」は曲名通りのワルツ調のテーマからSadowski(p) がTrio状態でのご機嫌な演奏を聴かせ、引き締まったトーンでStanczew(tp)がソロを展開する。そしてベストテイクは「Cannonbird」だろう。軽快なテンポで演奏されるハードバップチューンはテーマからのWroblewski(ts)の素晴らしいソロ、Sadowski(p) のアグレッシブなプレイと記憶に残る1曲である。
Wroblewski(ts)はこの作品の収録後1965年にワンホーンによる名作Polish Jazz Quartetをリリースし、ホーキンスやウェブスターをモダンにしコルトレーンの影響を加えたような逞しいスタイルで一気に名実共に認知度を高めていくことになる。
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Andrzej Trzaskowski (p) Zbigniew Namysłowski (as) 
Wojciech Karolak (ts)  Alojzy Musiał (tp)  Roman Dylag (b) 
Andrzej Dąbrowski (ds)  Rec.1960's
■1960年代初頭に短期間ではあるが活躍したポーランドのモダンジャズ・コンボ<The Wreckers> の珍しい作品。リーダーはポーランド・ジャズの巨匠の一人Andrzej Trzaskowski (p)である。このコンボはメンバーを入れ替えながらポーランドを訪れた Stan GetzやTed Cursonを迎えた録音も残している。演奏はこれぞハードバップというストレートで爽快感のある60年代ジャズの王道をいっている。特に安定した演奏で絶頂期とも考えられるNamysłowski (as)の塩辛いトーンでの切れ味のあるアドリブは素晴らしい。メッセンジャーズのハードバップチューンを彷彿とする「At The Last Moment」は冒頭からのNamysłowski (as) のロングソロが存分に楽しめ非常に魅力的である。「Nina's Dream」はウエスト風のフロントのアンサンブルによるテーマからKarolak (ts)とNamysłowski (as) がコルトレーンの影を感じさせるソロを聴かせる。そして、この作品のベストテイクは、モンクの曲調を思わせるアブストラクトでモダンなテーマからMusiał (tp)が抑制の効いたストレートなソロをとり クールなTrzaskowski (p)のソロからKarolak (ts) ~Namysłowski (as) とDąbrowski (ds)の掛け合いによる熱い展開の「Kalatówki 59」だろう。「Two Part Contention」はAndrzej Trzaskowski (p) TRIOによる演奏で 彼の淡々としたクールな東欧らしいスタイルが楽しめる。端正な音使いでバップ・テイストを加味しながらスイングする演奏は心地よい。
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B.Lou Jobes(ds) & His Jupiters   Rec.1961
■ベルギーのドラマーB.Lou Jobesの珍しいリーダー作。演奏しているのは、いずれも古い行進曲や軍歌。ジャズで言えばトラッド系の曲である。しかし、この作品には聴き所がある。比較的大きな編成によるアンサンブルはB.Lou Jobes(ds)のプレイをクローズアップさせることに徹しており、丁々発止のアドリブの展開とは異なるジャズの快楽を感じさせてくれる。1906年にアメリカ海軍中尉Charles A. Zimmermannにより作曲された「anchors aweigh」は聴けば誰もが記憶に残っている名曲である。B.Lou Jobes(ds)のソロからお馴染みのテーマに移行するが、何といっても精密機械のごとくのテクニックでエキサイティングなフレーズを随所に散りばめるB.Lou Jobes(ds)が素晴らしく、間違いなくベスト・テイクだろう。他にチャーミングなテーマと展開が印象に残る「N'oublie pas」、ブラスの華麗なアンサンブルを楽しむ「Devine qui」と忘れかけていたジャズの楽しみを思い出させてくれた1枚である。渋いフォトジャケットもコレクター心を誘惑する。
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Terry Taylor (vocal) with RONNEX ORCHESTRA  Rec.1956
■知る人ぞ知る女優・歌手Terry Taylor がベルギーのレーベルに録音した1枚。彼女の履歴の詳細は不明であるが、彼女の魅力的なルックスとドラマチックな歌声は一度聴けば虜になってしまう。エキゾチックな旋律を歌い上げる「STAY WITH ME」、彼女の歌唱力が存分に発揮される「DESERTED LOVE」、一度聴いたら忘れられない名曲「JUDAS」は魅惑のメロディーと彼女の魅力が凝縮されたベストテイク。生きることに勇気を与えるような感動的な「THE ONLY WAY」も彼女の歌唱力の賜物だろう。モノトーンのジャケットの存在自体も珍しいコレクターズアイテムでもある。全4曲素晴らしい底なしマイナーボーカルの名作。
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Andre Goudbeek(as) Karel Bogard(p) Pol Feyaert(double bass) Ronny Dussoir(ds) J. de Visscher(g)  Rec.1975
■ベルギーのモダン~フリージャズコンボのリーダー作。12inch LPからの2曲が収録されているのだが、オーソドックスなバップスタイルが素晴らしい作品である。12inch LPには少々乱暴で破壊的な演奏も収録されているが、この7inchにはベストテイクとも言えるカリプソナンバーの「After The War」と硬派で素晴らしいモダンジャズ「Without」が収録されている。Andre Goudbeek(as)は70年代にはJOHN TCHICAI との共演作をリリース。2000年に入っても積極的にリーダーを発表していた。バップナンバー「Without」この1曲で満足の1枚。
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Vadim Sakun(p) Andrei Tovmosyan(tp) Alexander Kozlow(bs) Nicholai Gromin(g) Igor Bierukshtis(b) Valery Bulanov(ds)  Rec.1962
■ポーランドのジャズ作品には至宝が眠っている。特に60年代にはいくつもの名作が録音され紹介されるのを待っている。いずれ総括されるべきレーベルではないだろうか。激渋のバリトンによるブルージーなソロから始まる「Nicholas Blues」は、一聴ジャズファンなら顔を上げてしまうであろう、ゆったりしたバラードで個々のソロがリレーされていくが、深夜にアルコールでもあおりながら聴きたい素晴らしい演奏である。一転、アップテンポでのベースのランニング・ソロで始まる「Autumn Dreams」は、典型的なハードバップ・スタイルのエキサイティングな展開である。特にTovmosyan(tp)とGromin(g)のソロはご機嫌で思わず身体が反応してしまう。後半のハードドライビングな Kozlow(bs)のソロも凄い!名手Sakun(p)のプレイが魅力的なのは言うまでもない。ポリッシュジャズ屈指の名作である。
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Andrzej Kurylewicz(tp) W. Karolak(p) R. Dyrag(b) A. Dabrowski(ds) Rec.1962
■Kurylewicz(tp)のオーソドックスながら熱のこもったプレイは魅力的である。この7inch EPはワンホーンでKurylewicz(tp)のプレイが楽しめる希少な作品である。アップテンポに乗ってマイルドなトーンでご機嫌なアドリブソロを展開する「Off minor」、切々と哀愁のメロディをKurylewicz(tp)がドラマチックに綴っていくバラード「Digini the song」、瞬発力のあるKurylewicz(tp)のソロの後のKarolak(p)のモダンなソロが素晴らしい「 Baguette」、ファンキーなテーマからKurylewicz(tp)のハードボイルドなソロが堪らない「Uncle's dance」、W. Karolak(p)トリオのサポートも出過ぎず見事である。聴けば顔が上がるだろう1枚。
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Stanislaw 'Drazek' Kalwinski(p) Stanislaw Otalega(b) Adam Jedrzejowski(ds) Rec.1962
■コメダに感じる暗い影は全く感じない。ジャケットから受ける前衛的印象を完全に打ち消してしまう、ウィントン・ケリーを思わせるメリハリのあるアドリブが素晴しい「 INSPIRATION」、ブルースフィーリング溢れる乗りの良いプレイが気持ちよいアップテンポの「BUT NOT FOR US」、東欧的旋律が新鮮な「JUST VALSE」、そして、このアルバム最高の1曲である「SYLVIE IN BLUE」、ウィントン~ガーランドの影響を感じるが随所にヨーロッパ的解釈を加え華麗にスイングする。全曲、針を落とせば誰もが振り向くだろう好盤である。ジャケットを見てスルーは一生の後悔となる・・・
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