7inch JAZZ WORLD ( ジャズのEP盤の世界 )

★未知との遭遇 ~ 7inch EPに録音された ジャズの 批評と研究 (資料)★ ★7inch EPには12inchでもCDでもリリースされていないオンリーワンの未知なる演奏が潜んでいます。1975年頃から御三家レーベルとヨーロッパ盤のコレクションと引き換えに7inch EPの収集という道楽にハマり現在に至る。年月を惜しまず収集し1枚1枚丹念に針を落としたコレクションをレビューしています。寄せ集めCDではなく、7inch EPの素晴らしい初版オリジナル・ジャケット・デザインを記録に残していくことも重要だと考えています。ポリシーは「レコードは価格で語らず」「ジャケ無しドーナツ盤も丹念に聴く」。★★サイト内画像・文章の転用・転載は御遠慮ください★★

カテゴリ: イタリア (Italy)

Bruna Lelli(vocal) with Orch. e arr. G.F. Lombardi Rec.1971
■イタリアン・シンガーBruna Lelliは1939年生まれ。1950年代よりラテン系ポップス等を歌い、その美貌も相成って本国では人気を得ていた。彼女のジャンルに拘らないアクティブな姿勢は1960年~70年代においても変わらず多くのシングルもリリースし名実共に認知されている。特にラテン・ファンクのテイストを取り入れた歌声は今聴いてもその魅力を失うことはない。この7inch EPはJetレーベルよりノベルティ用に録音された珍しい1枚で甘酸っぱいラテン~ジャズボッサの名曲「Maglioncino Marron」が収録されている。先導する涼しげなフルートに乗って少々ハスキーなボイスが印象深く、あっという間に終わってしまうのが惜しい1曲であるが記憶に残る。「il giorno piu importante」は哀愁漂う旋律をドラマチックに歌い上げるバラードで、終盤には彼女の語りも聴くこともできる。

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Franca Di Rienzo(vocal).with.I GENTLEMEN (Chorus Group)  +Piano Trio Rec.1958
■Rienzo(vo)はイタリア生まれで60年代に入ってスイスの音楽祭での称賛でヨーロッパにおいて一気に知名度が上がることになる。その後、フランス・ポップス界で活躍し多くのアルバムを残している。そんな彼女がフランスで活躍する前の1958年にピアノトリオをバックにイタリアの4人組男性コーラスグループ(I GENTLEMEN )と共演 ジャズ・スタンダード2曲等を歌った珍しい1枚。彼女の歌声は少々ハスキーで爽やか。そして時にエモーショナルなスタイルは非常に魅力的である。おなじみ「THERE WILL NEVER BE ANOTHER YOU」ではジャジーに、お馴染みのバラード「ANGELO BIONDO(I Should Care)」では彼女の歌声に聴き惚れる。他2曲「STRADA 'NFOSA」「LAURA」はFranca Di Rienzoは参加しておらずI GENTLEMEN のハーモニーが楽しめるよう編曲されている。紹介される機会の少ないユニークな作品である。
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Carol Danell (vocal) with Piero Umiliani (p, arr, cond) Franco Pisano (g) Berto Pisano (b) Gilberto Cuppini (d) & other  Rec.1957
■1934年ニューヨーク生まれのCarol Danell は我が国では知名度は低く、経歴もなぜか1957年~1967年までの約10年間のみイタリア、フランス等 ヨーロッパを中心に音楽活動をおこなっていたようだ。その間にリリースしたリーダー作も少なく、しかもポップス系のものが多数を占めている。この7inch EP 彼女にしては最もジャズに接近したイタリア録音の1枚。このブルー・ジャケットとグレー・ジャケットの作品ともにジャズ・ファンからも愛される存在である。PIERO UMILIANIとの関わりは1950年代からと長く、シネジャズの名盤「I PIACERI PROIBITI 」( 禁じられた欲望)が再発され、そこにCarol Danell が参加していたことでも記憶残っている方もいるだろう。スインギーな「THE LADY IS A TRAMP」に始まり、ドラマチックで一瞬にして雰囲気をセピア色に染める「YOU GO TO MY HEAD」、素晴しい乗りの「ALL OF ME」、最後はしっとりと卓越した歌唱力で聴かせるバラード「MOONGLOW」で締めくくる。
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Franco Scarica(accordion) Eraldo Romanoni(p) Renzo Nardini(ts)  Giulio Libano(tp) Ubaldo Beduschi(b) Enrico Cuomo(ds) Rec.1957
■聴いてみたい欲求に心が満たされるジャケット。イタリアン・ジャズ黄金期を迎える1957年に録音されたアコーディオン奏者Franco ScaricaがJAZZに挑んだ作品である。彼は1930年生れ 50年代よりポップス、ラテン、タンゴ等 ジャズとは距離を置いた領域で活躍しレコーディングしてきたが、唯一この1枚でモダンジャズ編成との演奏を収録している。参加しているミュージシャン個々は特に広く認知されているようなネーミングは見当たらないがプレイを聴く限り全くジャズとは関わってこなかった演奏とは感じなかった。お馴染みのテーマからScarica(accordion) ~Renzo Nardini(ts)~Giulio Libano(tp)とウエスト風のソロがリレーされる 「Blue Moon」、アップテンポでソロリレーされる中Giulio Libano(tp)によるソロが印象に残る「Robot 6」、端正なFranco Scarica(accordion) によるソロが白眉の「I´m In The Mood For Love」、太鼓によるリズムが暗示され一気に熱いGiulio Libano(tp)のソロに突入する「Sheik In Birdland」はベストテイクである。レア盤!!!
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Gianni Basso(ts) Renato Sellani(p) Pallino Solonia(b) Gil Cuppini(ds) Rec.1966
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■ミラノのPiccolo Teatro劇場で演じられたコメディー「EPITAFFIO PER GEORGE DILLON」のサントラとして録音された2曲を収録した7inch。一般流通していたのか劇場で配布されていたのか情報の少ない作品で有る。年代的にはそろそろコルトレーンの影を感じさせるGianni Basso(ts)が、ここではゲッツの余韻を残しながら鳥肌ものの素晴らしい演奏をワンホーンで聴かせてくれる。リズム・セクションも素晴らしく、個々がリーダー作をリリースしていた時期でのイタリアン・オールスターズと言っても過言ではないメンバーである。ベースの Pallino Soloniaは1962年のEnrico Intra Trioの名作に参加していた事でも実力のほどが伺える。短時間ではあるがイタリアン・ハードバップの魅力が見事に凝縮されている。ミィデアムテンポの「JOSIE'S THEME」はBasso(ts)の渋いソロが冴え渡るハードバップチューン。そしてバラード「EPITAPH」におけるBasso(ts)ときたらリードを通り絞り出る空気のカスレすら聴こえる鳥肌ものの至福のトーンで聴き惚れるしかない。生活感漂うシリアスなシーンのモノクロ・ジャケットもコレクター・マインドを唆られる。密かに7inch コレクターの間で語られてきた作品ではあるが、内容の素晴らしさがSNS等で拡散され、現在では知る人ぞ知る存在である。これぞBasso!である。
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Enrico Intra(p) Ernesto Villa(b) Pupo De Luca(ds) 1958
■40年ほど前「エンリコ・イントラ」というピアニストの名前を知った際は、カクテル系の軽いプレイを連想してしまい 距離を置いてしまい針を落とす機会を遠ざけていたような記憶がある。初めてオリジナル盤を入手したのは1957年のトリオ作<Jazz In Studio>だった。バップの香りを漂わせ端正でビターなプレイは聴いた途端に虜になってしまった。時にパウエルを思わせる硬派なフレーズは何とも魅力的である。この7inch EPも同時期の作品で名手Pupo De Luca(ds)が参加し心地よいブラシでIntraを刺激しご機嫌なフレーズを引き出している。「Lullaby For Trio」「Sonata N.1」「Night In Tunisia」、マリガンの「Line for Lions」を収録。60年代後半以降は時代の流れに合わせたかのような作品もリリースしファンの幅は広がっていたのだが・・・
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Enrico Intra(p)  Ernesto Villa(b)?  Pupo De Luca (ds)?  B-side  with (g) Rec.1962
イタリアジャズの巨匠Enrico Intraのリーダー作最大の謎としてイタリアのコレクターの間で語られる 正規盤未流通?の作品。この1枚については何人かのコレクターと情報交換を行ったが不明点がなお多く平行線で終わっている。ここで紹介している現物はミラノのレコード会社"Galleria del Corso"の元従業員から譲り受けたものであり、ご覧のとおりジャケットの曲目は全8曲が記載されているが6曲がマジックペンで消されている。実際にAB面それぞれに1曲づつの2曲しか収録されていない(メドレーで演奏されているのではないか?との見解もあるのだが・・・)。さらにレコードレーベルには<DISCO CAMPIONE INVENDIBILE>(販売不可能なサンプル ディスク)、<SCARTATO>(破棄)のステッカーが貼り付けられている。これが、一般的な正規リリース前にプレスされるサンプル盤を意味するのか、それとも収録内容とジャケットの記載内容が異なるための回収を意味するのかは好奇心の赴くままである。1962年といえばEnrico Intra Trio / Jazz In Studio(Columbia-Italy)と同時期の作品であるのだが、たしかな情報にたどり着けなかった為サイドメンには「?」をつけている。マジックによる消し込みが正しければレーベル記載と照合すると、暗示的なフレーズからボッサのリズムにのってオーソドックスなプレイで魅了するA面「Lui Andava A Cavallo」、バップの香りを漂わせながらもリリカルな旋律で聴かせるB面「Addio Addio」が収録されている事になる。50年代後半のインスピレーション溢れる熱いバップ・フレーズが聴けないのは残念ではあるが彼のスタイルの移り変わりを認識できる貴重な記録ではある。なお Sanremo 1962の記載があるためかライブ録音との批評をするSNSも存在したが、一聴してライブ録音ではない。ジャケットの曲目の消し込みのない状態の画像はRiccardo Di Filippo氏のジャズ情報サイト<ENCICLOPEDIA DEL JAZZ>やDiscogs等いくつかのサイトでアップされているが、画像を拡大して重ねてみると出所は不明だが同じものが転用使用されているようだ。いずれにしても当時、正規盤が予定通りリリースされているのならば少なくとも数枚がオク等で確認できるのではないだろうか・・・

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Carol Danell(vocal) Con  Piero Umiliani E I Suoi Solisti rec.1957
1950年~1960年代にヨーロッパで活躍した女性ジャズシンガーといえば、日本では北欧のシンガーが紹介されることが多く人気も同傾向と考えられる。北欧というクールで透明感のあるイメージが関心度を高めているのかも知れない。1934年ニューヨーク生まれのCarol Danell は我が国では知名度は低く、経歴もなぜか1957年~1967年までの約10年間のみイタリア、フランス等 ヨーロッパを中心に音楽活動をおこなっていたようだ。その間にリリースしたリーダー作も少なく、しかもポップス系のものが多数を占めている。この7inch EP 彼女にしては最もジャズに接近したイタリア録音の1枚。曲によりイタリア語と英語で歌い分け時にジャジーな雰囲気が漂うご機嫌な作品に仕上がっている。ここで共演しているPIERO UMILIANIとの関わりは1950年代からと長く、シネジャズの名盤「I PIACERI PROIBITI 」( 禁じられた欲望)が再発され、そこに参加していたことでも記憶にある。同じく1957年録音にUMILIANIと共演をしたブルーのジャケットに彼女のイラストが描かれた7inchが存在するが、同時期のこのグレーのジャケット作品は見かける事すら少なく入手は困難である。お馴染みHarry Warrenの「I Only Have Eyes For You」は彼女の歌唱力が発揮されたナンバーでジャジーなCarol が聴きどころ。イタリア語で語るように歌うMa L’Amore No」、楽しげにアップテンポで歌う「The Down Town Strutter’s Ball」、ノスタルジックな雰囲気が漂うバラード「T’Amo Dolce Notte」は彼女の個性が味わえる1曲。随所に散りばめられるメンバーのソロも存分に楽しめる。
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Gian Stellari e la sua orchestra with Jolanda Rossin(vocal) Rec.1960
Gian Stellariは1929年イタリア ロンバルディア 生まれの作編曲家。1950年代~1960年代にかけて多くの映画音楽を担当し名声を博した。この7inch EPは彼が率いるオーケストラに1939年生まれの女性シンガーJolanda Rossin(side-1)と男性シンガーElio Bigliotto(side-2)をゲストに迎えて録音された1枚である。二人ともジャズよりもポップス系のシンガーであるがJolanda Rossinはサンレモ音楽祭にも出演し60年代を中心に多くのリーダー作を残している。そんな彼女が珍しくオーケストラをバックに伸びのある美声でジャズ・スタンダード「Summertime」をイタリア語で歌っているのが興味深い。「Goodnight Goodnight」はロマンチックなバラード。Elio BigliottoがメインでJolanda Rossinと歌う「La Mazurka Tirolese」と「Crepuscolo」はジャズではない。
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Anna Moffo(vocal)  Piero Umiliani(p)  Livio Cervellieri(ts) Gino Marinacci(bs)Berto Pisano(b)Giuseppe Conte(ds) Rec. 1960
1932年アメリカ生まれ 欧米を中心に活躍したソプラノ歌手・女優のAnna Moffoがジャズにアプローチした1枚。日本においてはオペラ歌手としての認知度が高く美声と美貌で評価も得ていた。ここでは全曲Gershwinの曲を取り上げ彼女の個性と実力を存分に発揮した聴きごたえのある作品に仕上げているが、ジャズファンからの評価は賛否別れることだろう。彼女をサポートするバックミュージシャンの豪華さは彼女が只者ではないことを暗示している。お馴染みの曲ばかりであるが彼女の音域の広さがそれぞれの曲に新たなアプローチにより新鮮に聴こえる。Gino Marinacci(bs)などのソロも作品自体をジャジーな雰囲気に仕上げている。「The Man I Love」「Miracable You」「Fascinating Rhythm」「It`s Wonderful」を収録。
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