7inch JAZZ WORLD ( ジャズのEP盤の世界 )

★未知との遭遇 ~ 7inch EPに録音された ジャズの 批評と研究 (資料)★ ★7inch EPには12inchでもCDでもリリースされていないオンリーワンの未知なる演奏が潜んでいます。1975年頃から御三家レーベルとヨーロッパ盤のコレクションと引き換えに7inch EPの収集という道楽にハマり現在に至る。年月を惜しまず収集し1枚1枚丹念に針を落としたコレクションをレビューしています。寄せ集めCDではなく、7inch EPの素晴らしい初版オリジナル・ジャケット・デザインを記録に残していくことも重要だと考えています。ポリシーは「レコードは価格で語らず」「ジャケ無しドーナツ盤も丹念に聴く」。★★サイト内画像・文章の転用・転載は御遠慮ください★★

カテゴリ: ハンガリー・オーストリア

Albert Mair(p) Walter Strohmair(b) Karl Prosenik(ds) Rec.1968
■Mairはドイツ~オーストリアを中心に活躍していたピアニストである。1968年にはGOJKOVIC QUINTETのピアニストとしてツアーに参加していた。哀愁の美旋律が素晴しいside1「BLUE WALTZ」は曲名通りのワルツ調の極上の旋律をアップテンポでなぞっていくが、Mair(p) のまるでクリスタルガラスが舞い散るようにリリカルにスイングする様はサダビーの如くシュールで快感である。この曲を聴けば誰もがジャケットに注目することだろう。side2「WHY NOT」は乗りの良いジャズ・ロック調のリズムに乗ってMairが高揚感たっぷりのアドリブを展開する、いかにもこの時代らしい演奏である。2曲ともにあっという間に時間が通りすぎてしまう7inch3分縛りが惜しまれる展開である。紹介される機会は少ないが60年代欧州ピアノトリオによる隠れた名作と言ってもいいだろう。ジャケットは極ペラでレコードを挟む仕様となっている。
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Limehouse Modern Quartet : Unknown (ts) (p,vib) (b) (ds) Rec.1965
■オーストリアのグループによるモダンジャズとクラシックの融合を模索したサードストリーム的な作品。バッハの「Invention No .1」は原曲に忠実にクラシックマナーに基づき演奏されているプロローグ的な短編曲。ベストテイク「Hell's tune」はクラシカルにスタートするがメンバー個々が主張するソロスペースも十分に確保されたアレンジは非常にジャズ的で今聴いても新鮮である。特にテーマの後の透明感溢れるピアノ・ソロ、テナーの乾いたトーンによるアドリブはジャジーな香りも発散し素晴らしい。男性のボイスアナウンスからカリプソのリズムが加わりvibによるソロが活躍する「Vibraphon Calypso」、ラストはクラシック的なpとtsの複雑なアンサンブルが印象的な「Berner Marsch」で幕を閉じる。歴史あるクラシック音楽にサムシングを加え新たなミュージックを試行した興味深い1枚である。
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Aladar Pege(b) Jeno Balogh(p) Imre Koszegi(ds) Rec.1964
■1939年生まれのAladar Pegeは元々はクラシック音楽をルーツとするベーシストであるが、その超絶とも言われるテクニックを屈指してのハービー・ハンコック等 ジャズミュージシャンとの共演でも知られるところである。私的にはハードバップの名作Imre Koszegi(ds)の<For Kati>が私的愛聴盤だけに、彼のアグレッシブなドラミングにより どんなピアノトリオに仕上がっているのか興味深々で入手した1枚。どの曲もお互いを触発させるような三位一体の名演が繰広げられるが、やはりAladar Pege豪快で良く鳴るベースが脳天を刺激する。A面は暗示的なピアノソロで始まり乗りの良いご機嫌な演奏に移行していく「Blues in bled」、B面はチャーミングな民謡調至福のメロディーが散りばめられながら斬新な演奏が繰広げられる「Kek To」、そして何といっても白眉は「Close your eyes」だろう。フリーに突入する一歩手前のスリリングでスピード感溢れる熱い演奏が緊張感を発散する。とても瞳を閉じるわけにはいかないだろう。ジャケットのPege(b)の表情からも入魂のプレイが聴こえてくる。背筋がピンと伸びる素晴らしい1曲である。
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STUDIO 5: Jancsi Korossy(p) Karel Velebny(ts,vb) Jan Konopasek(bs) Artur Hol litzer(v-tb) Vladimir Tomek(g) Ludek Hulan(b) Ican Dominak(ds) Rec.1961 / Gustav Brom Combo: Jaromir Hnilicka(tp) Josef Audes(bs) Oldrich Blaha(p) Milan Rezabek(d) Vaciav Skala(ds) Rec.1962
■硬軟予測不能なスリリングな展開で魅了するヤンシー・キョロシーが参加したSTUDIO 5による演奏「Souvenirs」が白眉。チャーミングなピアノソロから故郷ルーマニアの伝統的旋律が引用されたような哀愁漂う魅惑のメロディが奏でられ、彼のpは昇華するような個性的な音使いでモダンにスイングする。この1曲を聴くために入手を試みる価値がある。B面はファンキーなハードバップ「Three pitt in」。ハイノートでソロをとるtpが◎ 
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Heinz Fibich(tp) Kurt Urbanek(p) Toni Michelmayr(b) Poldi Mayer(ds) Rec.1985
■80年代のCD化過度期に録音されたアルバムには未だに再発もされず埋もれているものも多い。このオーストリア盤は「ジャズをもう一度」というタイトルにもそそられる。Fibich(tp)のプレイは風貌とは異なるオーソドックスなスタイルで、明瞭で良く歌う乗りの良いモダンなプレイとマイルドなトーンはヨーロッパ的で素晴らしい。Side-1 軽快で乗りの良いアップテンポの演奏がご機嫌な「F.U.M.M.」、Side-2 Fibich(tp)のクリアでクールなソロと粒立ちの良いUrbanek(p)のプレイが素晴らしい「Free Lancing」2曲ともベースの音をクローズアップしたエキサイティングな録音で高揚感に包まれる。
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Jozsfe Szabo(p,org) Jeno Beamter(vib,ds) Aladar Pege(b) Rec.1960'
■東欧の名手Aladar Pege(b)が参加したトリオによる演奏が収録されている1枚。A面はメンバーのオリジナルを含む「I sow the Tour Eiffel」「a mood」「Once in a dream」「Natasha」「It's getting late」B面ではJ.KarnやI.Berlinの「Bradway Melody」「You are my lucky star」「Smoke gets in your eyes」「All the things you are」「Tropical beatware」「Say it with music」に加えFats Wallerの「All my life」までメドレーで演奏している。基本は3人による演奏でピアノトリオになったりvibが加わったりと全曲楽しめる。とりわけSzaboのピアノが素晴しい。
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Dick Murphy (tp) Hans Salomon (as) Hans Koller (ts) Joe Zawinul (p) Kurt Wald (b) Victor Plasil (d) Rec.1954
■この時代のHans Koller (ts)には、彼にしか発散できない青いオーラを感じる。密かに50年代の彼を愛聴しているファンも多いはずだ。聞き所は、A面2曲のワンホーンによる彼のオリジナル。冷ややかでハスキーでメタリックなトーンがバラードを綿々と歌い綴る。1曲目でJoe Zawinul (p) が数十年後にウェザーリポートのキーボード演奏で見せる手癖を早くも聞くことができる(笑)B面2曲のSextettによるアップ・テンポの演奏では、切れ味鋭いHans Koller (ts)のソロを味わえる。この7inch愛聴盤です。
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Joe Zawinul(p) Johnny fischer(b) viktor plasil(ds) Rec.1957
■ZAWINULが1957年に故郷オーストリア(ウィーン)で録音した幻のファーストリーダー作である。超マイナレーベルだがピアノ、ドラムは勿論ベースの音も分厚くブンブンと迫ってくる。バラード「Easy Living」では実に愛らしい落ち着いた表現で魅力を発散する。アップテンポの「What a differen ce a day make」ではサビからアドリブに入った途端に乗りの良いご機嫌なソロを展開する。「The Beat」(improvisation)は裏面全部を占める。曲名どおりZawinul(p)がフォービートに乗ってブルースフィーリング溢れるアドリブを魅力的なフレーズを散りばめながら聴かせる名演である。このアルバムの演奏からは14年後の天気予報は誰も的中出来なかっただろう。
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Hans Salomon(ts) Dick Murphy(tp) Joe Zawinul(p) Rudolf Hansen(b) Viktor Plasil (ds) Rec.1957
■Zawinul(p)の幻盤の1枚。軽快なテーマが印象的な「CHEREMOYA」は個々のソロを十分楽しめるバップチューン。Zawinul(p)のソロはモダンで美旋律が随所に登場し「はっと」させられる。グルダの「QUARTET」はMurphy(tp)のソロをクローズアップした展開であるがヨーロッパらしい淡々とした演奏で熱さは感じない。お馴染み「NIGHT IN TUNISIA」はお決まりの出だしであるが、熱を帯びていくSalomon(ts)のアドリブが聴きもの。Zawinul(p)はモダンなフレーズを随所に散りばめる。超マイナーレーベルではあるが録音はすこぶる良い。
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