7inch JAZZ WORLD ( ジャズのEP盤の世界 )

★未知との遭遇 ~ 7inch EPに録音された ジャズの 批評と研究 (資料)★ ★7inch EPには12inchでもCDでもリリースされていないオンリーワンの未知なる演奏が潜んでいます。1975年頃から御三家レーベルとヨーロッパ盤のコレクションと引き換えに7inch EPの収集という道楽にハマり現在に至る。年月を惜しまず収集し1枚1枚丹念に針を落としたコレクションをレビューしています。寄せ集めCDではなく、7inch EPの素晴らしい初版オリジナル・ジャケット・デザインを記録に残していくことも重要だと考えています。ポリシーは「レコードは価格で語らず」「ジャケ無しドーナツ盤も丹念に聴く」。★★サイト内画像・文章の転用・転載は御遠慮ください★★

Phil Southwood(p) Gordon Cummings(b) Mike Grose(ds) Burt Male(g) Live at UNION's Jazz Club Michaelmas Term Rec.1961Phil Southwood率いるレギュラーグループが、大学のミカエルマス学期の終わりに校内のジャズクラブで行ったライブのベストパフォーマンス2曲を収録した自主制作盤。名演を期待させるプレステージ・レーベルを彷彿とするモノトーンのジャケットがコレクターズマインドを刺激する。どちらの演奏もバップ・マナーに乗った素晴らしい演奏で期待を裏切ることはない。特に力強い硬派なタッチのPhil Southwoodとキラリと光る良く歌うフレーズを随所に聴かせるBurt Male(g)のプレイは聴き所である。Side-A Mal Waldronの「D's Dilemma」は彼の曲らしい哀愁漂う旋律が魅力で次第に熱を帯びていくファンキーチューン。Side-Bは アップテンポに乗って、ご機嫌にスイングするお馴染みHorace Silverの名曲「Sister Sadie」を収録。時折聴こえる観客の声や拍手が臨場感を感じさせる 国内では無名のマイナーなミュージシャンによる演奏ではあるが両曲共必聴の7inch EPである。
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A French movie directed by Louis Felix. Musique de Fernand Clare. ORCHESTRE sous la Direction de PAUL FABRE. Rec.1959
■1959年劇場公開された<Chaleurs D'ete(私を抱いて)>のサントラ盤。監督は
ヴェニス映画祭でもグラン・プリ短篇映画賞をとったことのあるルイ・フェリックスが務めている。内容は、南フランスのブドウ園で繰り広げられる三角関係を時にロマンチックに画くラブコメディ。音楽は、1911年生まれのフランス作曲家でミュージシャンでもあるFernand Clareが担当している。彼のジャズをベースにしつつジャンルに拘らない豊富な経験はこの作品でもいかされている。管楽器がブルージーなアンサンブルで歌謡調のメロディーを奏でる「Chaleurs D'été」、ビッグバンドによるアグレッシブでダイナミックな熱い演奏が印象深い「Allez "Ciao"」、マーチ風の口笛に導かれる軽快な合唱曲「La Légende De La Vigne」、そしてジャズファンとしては聴き逃せないコンボで演奏されるアップテンポのモダンジャズ「Bagarre」は熱いハードバップチューン!この時代のジャズを見事に反映した1曲である。
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Paul Gonzalves(ts) with THE IVYS BILLY STRAYHORN ORCH  Rec.1960'
■数多いエリントニアンの中でPaul Gonzalves(ts) ほどモダンファンやジャズ・レコードコレクターに関心を持たれているミュージシャンは少ないだろう。それは1964年Vocalion(UK)レーベルからのワンホーンによるBoom-Jackie-Boom-Chick、アルゼンチンのピアニストEnrique Villegasとの1968年のEncuentro、PHIL BARBOZA orquestra (CABO VERDE-Portugal)との共演作等マニアックな作品が存在することも関係するだろう。この7inch EPも同様に希少な存在であり記憶に残る。ここでは、1915年生まれでエリントンとの関わりも深かったBilly Strayhorn率いるオーケストラをバックに、彼独特の掠れぎみの魅力的なトーンによるご機嫌なアドリブを炸裂させており絶好調である。他作でも取り上げている「Perdido」は男性コーラスの合間を縫って展開されるソロに酔う。お馴染み「Take The A Train 」でもご機嫌なソロに耳を奪われる。超マイナーレーベルからのリリース故に紹介されることも少ないリーダー作である。。
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Al Grey(tb) Waywon Reed(tp) Mel Wanzo(tb) Jimmy Forrest(ts) Walter Bishop(p) Norman Keenan(b) Sonny Payne(ds)  Rec.19??
★A Limitation production record. A very rare source.

Al Grey(tb) 1925年生まれ 特に黄金期のCount Basie orchestraのソリストとして名実共に知られる。自身のリーダー作も1960年代のArgoレーベルをはじめ1970年代から1990年代にかけて、さまざまな編成による録音を残している。彼の豪放でファンキーそれでいてテクニックも兼ね備えた演奏スタイルと人柄はミュージシャンの間でも愛され続け数々のセッションにも名を連ねている。この作品はジャケットにも記載があるようにフィラデルフィアの有名ジャズ・クラブ<ジャスト・ジャズ>に捧げたプライベートレーベルからの1枚でこの7inch EPのみで聴く事ができる演奏が収録された非常に珍しい1枚である。気心の知れたメンバーとのソウルフルなソロリレーは安心して聴く事ができる内容だ。お馴染み「JUST JAZZ」は軽快なテーマからフロントがソロを展開していくが、爽快感のあるバップマナーのWaywon Reed(tp)の次に登場する個性派Jimmy Forrest(ts) のR&B系ソロが印象に残る。ミディアムテンポに乗った淡々とした渋いプレイをWalter Bishop(p) がトリオ状態で聴かせ、フロントのファンキーなテーマからソロリレーへと継なぐ「TURN ME LOOSE」はWaywon Reed(tp)と後半のAl Grey(tb)の力強いソロが聴き所。2曲ともにバップマナーに沿ったノンリーダーセッションの名演である。

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Herb Schoenbohm(p) & (b) & (ds,per)  Rec.1965
■At  Air Track Productions から ノベルティー等 自主盤としてリリースされた ボッサ・ジャズ系 ピアノトリオによる1枚。このトリオはミネソタ州ミネアポリスにある1920年代から営業する老舗デパートDayton’sのDAYTON’S TEAROOMに1960年代中頃より出演し人気を得ていたという。そして 同時期に開催されていたファッションショーKaleidoscope IIIの為に同地を訪れていたSimon and Garfunkel もこのトリオの演奏を楽しんだという記録も残っている。この作品の聴きどころはピアノではなくドラム(パーカッション)とベースが織りなす高揚感だろう。ピアノが外れた空間は まるで 70年代マイルスのステージでマイルスの最初の一音を向かい入れるまでの混沌とした終わりのないリズムの音宇宙を思い浮かべてしまう。リズムをクローズアップした三位一体の素晴らしい演奏は次第に熱を帯び、いつの間にか聴き入り気付かないうちに陶酔感に満たされているような感覚に陥ってしまう。Baden Powell の名曲「Berimbau」は冒頭の男性の奇声で引くこと無く じっくりとリズムを楽しみながら 聴き進んでいるうちに哀愁の旋律に移行する素晴らしい1曲である。Schoenbohm(p)のオリジナル「Bachianas amaricanas」はロマンチックな美旋律をボッサのリズムに乗ってトリオが綴る誰もが聴き惚れる記憶に残る名曲となるだろう。「Arrastão」は冒頭プロローグのようなテーマから一気にボッサのリズムが加わり盛り上がる演奏である。結成時からボッサ系の演奏をしていたトリオなのか時代のトレンドに反応してのスタイルかも不明である。
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Georges Arvanitas(p)  Jacky Samson(b)  Charles Saudrais(ds) Rec.1984
■Arvanitas編集・編曲によるトリオによる演奏のA4 サイズの教則本(楽譜)。Vol.1はGeorge Gershwin集、Vol.2はDuke Ellington集でVol.2だけには7inch EP 2枚(33rpm)が付属している。もちろん当時のレギュラーメンバーによる演奏で今だ他のフォーマットでは再発されていない。教則本だけあって全曲オーソドックスな演奏に終始するが、新主流派的演奏を経て円熟期を迎えるArvanitas TrioのプレイはSamson(b)の重厚なサポートを得て貫禄すら感じるご機嫌で安定感十分の演奏である。収録曲は「I Let a Song Go Out of My Heart」「It Don't Mean a Thing」「Black and Tan Fantasy」「Sophisticated Lady」「Drop Me Off in Harlem」「Mood Indigo」と全曲お馴染みの名曲揃いであるが、苦肉の末にどれか1曲をベストテイクとして選ぶならば、まさしく三位一体のプレイでスインギーに展開される2'20"からの「It Don't Mean a Thing」だろうか。いやブルージーなムード漂う「Black and Tan Fantasy」「Mood Indigo」も魅力的だ・・・・
他の作品では聴けないほどにJacky Samson(b) のプレイがクローズアップされる。ぜひ大音量で聴きたい1枚である。
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Bruna Lelli(vocal) with Orch. e arr. G.F. Lombardi Rec.1971
■イタリアン・シンガーBruna Lelliは1939年生まれ。1950年代よりラテン系ポップス等を歌い、その美貌も相成って本国では人気を得ていた。彼女のジャンルに拘らないアクティブな姿勢は1960年~70年代においても変わらず多くのシングルもリリースし名実共に認知されている。特にラテン・ファンクのテイストを取り入れた歌声は今聴いてもその魅力を失うことはない。この7inch EPはJetレーベルよりノベルティ用に録音された珍しい1枚で甘酸っぱいラテン~ジャズボッサの名曲「Maglioncino Marron」が収録されている。先導する涼しげなフルートに乗って少々ハスキーなボイスが印象深く、あっという間に終わってしまうのが惜しい1曲であるが記憶に残る。「il giorno piu importante」は哀愁漂う旋律をドラマチックに歌い上げるバラードで、終盤には彼女の語りも聴くこともできる。

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Franca Di Rienzo(vocal).with.I GENTLEMEN (Chorus Group)  +Piano Trio Rec.1958
■Rienzo(vo)はイタリア生まれで60年代に入ってスイスの音楽祭での称賛でヨーロッパにおいて一気に知名度が上がることになる。その後、フランス・ポップス界で活躍し多くのアルバムを残している。そんな彼女がフランスで活躍する前の1958年にピアノトリオをバックにイタリアの4人組男性コーラスグループ(I GENTLEMEN )と共演 ジャズ・スタンダード2曲等を歌った珍しい1枚。彼女の歌声は少々ハスキーで爽やか。そして時にエモーショナルなスタイルは非常に魅力的である。おなじみ「THERE WILL NEVER BE ANOTHER YOU」ではジャジーに、お馴染みのバラード「ANGELO BIONDO(I Should Care)」では彼女の歌声に聴き惚れる。他2曲「STRADA 'NFOSA」「LAURA」はFranca Di Rienzoは参加しておらずI GENTLEMEN のハーモニーが楽しめるよう編曲されている。紹介される機会の少ないユニークな作品である。
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Didier Goret(p) Georges Callewaere(b) Christian Laurella(ds) Rec.19??
■Didier Goretは1957年フランス・アミアン出身。9歳からピアノを弾き始め1980年代に入りマーシャル・ソラールとの即興演奏、キューバ音楽等の作編曲にもアプローチしその独創的な活躍に対して数々のアワードを受賞。その後1990年代にかけて 自らのビッグバンドやグループを率いて演奏するが さらに彼の探究心はジャンルにこだわる事なくオペラや映画音楽のスコアを提供するなど そのバイタリティに満ちあふれた才能は特に欧州において名実共に認められる存在となっていく。この7inch EPは彼がジャズ・ピアニストとして活躍していた頃に短期間結成していた<Orpheus Trio>による自主レーベルからの希少な作品である。日本国内では殆ど流通しなかった1枚ではあるが、研ぎ澄まされたタッチとエバンスの演奏でもお馴染みの選曲からコレクターなら気になる存在であることは間違いないだろう。Didier Goretがエバンス・ライクなスタイルを交えながら知的なプレイに徹する「ISRAEL」とコルトレーンの「NAIMA」。ご機嫌なテンポで歯切れの良いタッチが圧巻の「GLORIA'S STEP」ともっと聴いてみたい欲求にかられる3曲が収録されている。残念ながら他にピアノトリオによる作品は見つける事が出来なかったが、2010年にはパリにおいてピアニストとしてThe Fab Swing Trio "Swingin’ The Beatles"というタイトルでライブを開催し現役で活躍していたようである。
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Herbert Katz(g) Teuvo Suojarvi(p) Erik Lindström(b) Kalevi Hänninen(ds)  Rec.Helsinki 1959 
■Herbert Katz (g):1926年フィンランドの古都の一つTurkuに生まれる。十代の頃からジャズに興味を持ちギターを手にしてソロ奏法を音楽学校で学んでいました。50年代~60年代には、この作品でも共演しているTeuvoSuojärvi(p)率いるトリオと共に活躍しフィンランド屈指のジャズ・ギタリストとして この時代のフィンランド・モダンジャズの開拓者の一人として名実ともに本国では認知度は高い。そんな彼の初期の希少なリーダー作がこの7inch作品で「ジャズに憧れていた」という思いが伝わってくるような溌剌としたよく歌うプレイが素晴らしく、圧倒的なスイング感が伝わってくる名演が収録されている。SNS発信等のネットワークによる情報拡散がされる中、ほとんど内容について紹介されていない幻の1枚だろう。躍動感のあるバッパーなピアノのイントロからアップテンポに乗ってKatz (g)が思わず顔のあがるご機嫌なロングソロを聴かせるご機嫌な「Cherokee」、デリケートで繊細なトーンも交えながらスイングする「Out Of Nowhere」、ブルースフィーリング溢れるゆったりしたソロからテンポが上がりKatz (g)一気にソロで盛り上げる「Guitar Blues」、お馴染み「What's New」は唯一のバラードでしっとりと聴かせる都会的でセンスの良いソロはまさにマンハッタンの夜景が思い浮かぶ。全4曲Herbert Katz (g)の個性と豊かな才能が凝縮された素晴らしい作品である。個性には欠けるものの名手Teuvo Suojarvi(p)の端正なプレイも印象に残る。1950年代から多くのセッションには参加していたが、リーダー作は少なく 晩年1987年作 Kompass Records からのHerbert Katz & Friendsによる<Keep Swingin'> でベテランらしいプレイを聴く事ができる。
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